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相続

遺言書による相続登記

2018.07.08更新

「父が生前に遺言書を残していました。その内容は実家の土地建物を長男である私に相続させるというものでした。この遺言書を使って不動産の名義変更ができるのでしょうか?」との相談をお受けすることがあります。

ここでは、遺言書による相続登記および遺贈の登記についてお話しします。

1.遺言書の種類によって手続の流れが変わる?

遺言書については、一般的によく作成される「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」を前提にお話しします。

☑自筆証書遺言の場合

発見された遺言が自筆証書の場合には、相続登記又は遺贈の登記の前提として家庭裁判所での検認手続が必要になります。

検認手続とは、簡単に言うと当該遺言書が法律の定める要式を備えているかを調査し、その遺言書の状態を確定させる手続であり、家庭裁判所に申し立てることにより開始します。

検認についての詳細はこちらをご確認ください。⇒遺言書の検認

検認手続を経由していない遺言書は、法務局で利用することができません

また、銀行や証券会社で預貯金や株式の手続をする際にも遺言書の検認は必要になります。

☑公正証書遺言の場合

発見された遺言書が公正証書の場合には、検認手続は必要ありません

公正証書遺言の場合には、当該遺言書の作成に公証人が関与しており、再度、家庭裁判所に確認してもらう必要はないと考えられるからです。

そのため、公正証書遺言の場合には、煩雑な手続をひとつ省略することができます。

2.不動産取得者が相続人の場合(遺言書による相続登記)

遺言により不動産を取得する人が、遺言者の相続人(子や配偶者等)の場合、遺言書により単独申請で相続登記を行うことが可能です。そのため、仮に遺言執行者の定めがあったとしても、当該遺言執行者が手続に関わる必要はありません。

子や配偶者が単独で手続を行う場合の必要書類は以下のとおりです。

・登記申請書

・遺言書(検認済みの自筆証書、公正証書等)

・遺言者の死亡を証する戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・遺言者の住民票の除票又は戸籍の除附票

・子や配偶者の戸籍謄本

・子や配偶者の住民票又は戸籍の附票

この場合、不動産の固定資産評価額の0.4%を登録免許税として法務局に納付する必要があります(基本的には収入印紙で納付します)。

たとえば、固定資産評価額が1000万円の相続登記でしたら、4万円を納付する必要があります。

3.不動産取得者が相続人以外の場合(遺言書による遺贈の登記)

遺言により不動産を取得する人が、遺言者の相続人以外の場合(孫や親族でない人等、以下「受遺者」という。)、遺言執行者の定めがあれば、遺言執行者と受遺者の共同申請で遺贈の登記を行うことが可能です。なお、遺言執行者の定めがない場合は、相続人全員が義務者となり、受遺者との共同申請で遺贈の登記を行います。

受遺者と遺言執行者又は相続人が登記手続を行う場合の必要書類は以下のとおりです。

(義務者が遺言執行者の場合)
・登記申請書

・遺言書(検認済みの自筆証書、公正証書等)

・遺言者の死亡を証する戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・登記済証又は登記識別情報

・遺言執行者の印鑑証明書

・受遺者の戸籍謄本、住民票又は戸籍の附票

・固定資産評価証明書

*家庭裁判所により遺言執行者が選任された場合は、その審判書

(義務者が相続人の場合)
・登記申請書

・遺言書(検認済みの自筆証書、公正証書等)

・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・登記済証又は登記識別情報

・相続人全員の印鑑証明書

・受遺者の戸籍謄本、住民票又は戸籍の附票

・固定資産評価証明書

なお、遺言者の登記簿上の住所と遺言者の最後の住所が相違する場合、その繋がりを証する住民票の除票や戸籍の除附票を添付して住所変更登記をする必要があります。

受遺者(相続人以外の人)が遺贈の登記をする場合、不動産の固定資産評価額の2%を登録免許税として法務局に納付する必要があります(基本的には収入印紙で納付します)。たとえば、固定資産評価額が1000万円の遺贈の登記でしたら、20万円を納付する必要があります。

4.最後に

遺言書がある場合は、相続人間での遺産分割協議は不要です。また、遺言執行者がある場合には、相続人(又は他の相続人)の関与なくして登記手続を進めることができます。

確認すべきポイントは、次の3点です。

・遺言書の種類
・遺言執行者の有無
・不動産取得者が相続人か否か

上記ポイントを確認の上、手続の方針を決定してから登記の準備に取りかかりましょう。