家族信託の相談事例(認知症対策編)
2018.06.06更新
ここでは、当事務所で組成した家族信託の事例をご紹介します。
1.相談内容
相談者は母、長女、次女の3名、母は不動産(自宅&賃貸用アパート)と数千万円の預貯金を保有していました。
ご家族の願いは、母が万が一、認知症等になった場合、不動産の売却、賃貸、建て替えができなくなってしまうのを回避したいとのことでした。また、母の預貯金の管理も合わせて行いたいとのことでした。
そこで、成年後見制度は資産運用が制限されることから、家族信託を利用する方向でご依頼をお受けしました。
2.信託の組成
母を委託者(財産の保有者)、次女を受託者(財産の管理者)として信託契約を締結し、母を受益者(財産より恩恵を受ける人)、母の認知症等に備え、長女を受益者代理人(受益者の権利に関する行為を代理する人)としました。
公証役場での信託契約の締結後、信託契約に基づき不動産の名義を母から次女に変更しました。
3.本信託で実現できること
・母が元気なうちに次女へ不動産の管理権限が引き継がれるため、将来、母が認知症等になった場合でも、引き続き、不動産の売却、建て替え、賃貸ができるようになります。
・母の現金が信託財産となることにより、その管理を次女が行うことになるため、信託財産については認知症等による預金凍結のリスクがなくなり、安定的に母の生活に必要な資金を拠出することができるようになります。
4.最後に
本事例では、当事務所において信託の組成、信託契約書の起案(公正証書化)、不動産登記を担当しました。
家族信託は、その名のとおり「家族に信じて託す」という財産管理・資産承継の仕組みであり、「信頼できる家族」の存在が前提となります。その前提があってこそ、家族信託が成り立ち、ご自身及びそのご家族の想いを実現することができるのです。
家族信託は、財産を保有している方が認知症等になってしまった場合、その利用が難しくなります。そのため、早いうちに専門家にご相談することをお勧めします。