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相続

相続分と遺留分

2017.10.31更新

「相続分と遺留分はどう違うんですか?」とのご質問をお受けすることがあります。

ここでは、相続の基礎知識として、『相続分』と『遺留分』についてお話しします。

相続分

☑相続分とは?

相続分とは、相続人が複数いる場合における遺産に対する各人の取り分の割合をいいます。 相続分の決定方法には、次の2つがあります。

①指定相続分 ②法定相続分

☑指定相続分とは?

指定相続分とは、次の2つのことをいいます。

・被相続人が遺言によって指定する「相続分」 ・被相続人が遺言によって指定を委託した第三者が指定する「相続分」

たとえば、被相続人である父が遺言に「長男は4分の3、次男は4分の1」と定めていた場合(法定相続分とは異なる割合)のことです。 また、父から相続分の指定を委託された第三者である叔父が相続分を指定する場合のことです。

指定相続分の定めがある場合、相続人は原則的にその指定に従うことになります。 ただし、相続人全員の合意(遺産分割協議)により指定と異なった割合にすることも可能です。


☑法定相続分とは?

法定相続分とは、指定相続分がない場合に民法の定めるところにより決まる「相続分」のことをいいます。

現行民法(昭和56年1月1日以後に開始した相続に限る)で定める割合は以下のとおりです。

①子と配偶者が相続人である場合

子(第1順位者) 2分の1
配偶者 2分の1

*子が複数の場合は、2分の1を等分。

②配偶者と直系尊属(父・母・祖父・祖母)が相続人である場合

直系尊属(第2順位者) 3分の1
配偶者 3分の2

*直系尊属が複数の場合(たとえば、父と母)は、3分の1を等分。

③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

兄弟姉妹(第3順位者) 4分の1
配偶者 4分の3

*兄弟姉妹が複数の場合は、4分の1を等分。

*父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の法定相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の法定相続分の2分の1となります。

遺言による指定相続分がない場合は、上記の法定相続分に従うこととなります。 ただし、相続人全員の合意(遺産分割協議)により指定と異なった割合にすることも可能です。

法定相続分は、相続人間の合意が整わない場合の法律上の目安となります。

遺留分

☑遺留分とは?

遺留分とは、一定範囲の相続人に最低限保障される取り分の割合で、被相続人の贈与や遺贈によって奪われることがないものをいいます。

この遺留分を有する者を遺留分権利者といいます。 遺留分権利者は兄弟姉妹を除いた相続人である、『子及び子の代襲者(孫等)』『直系尊属(父母・祖父母等)』『配偶者』となります。

なお、遺留分権利者は、相続人であることが前提であるため、相続欠格事由に該当する者、相続人の廃除の審判を受けた者、相続放棄をした者は遺留分を有しません。

ここで、相続欠格と相続人の廃除について説明します。

相続欠格とは、下記の者から法律上当然に相続資格を奪うことをいいます(以下、民法891条を引用)。

・故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者 ・被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。 ・詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者 ・詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者 ・相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、もしくは被相続人に重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときに、被相続人が家庭裁判所の審判により、その推定相続人の相続権を奪うことをいいます。

相続欠格及び相続人の廃除の場合には、代襲相続人や次順位の相続人が遺留分を有することになります。


☑遺留分の割合はどれくらい?

遺留分の割合は、遺留分権利者が「誰か」によって遺留分権利者全体の割合が定められます。

遺留分権利者が複数いる場合は、法定相続分の割合によって各遺留分権利者の遺留分の割合が決まります。

直系尊属のみ
3分の1
子又はその代襲者のみ
2分の1
配偶者のみ
2分の1
配偶者と子又はその代襲者
2分の1
配偶者と直系尊属
2分の1

たとえば、父が相続人ではない第三者に全財産を遺贈するとの遺言を残していた場合、相続人は配偶者と子1人だと、配偶者と子の遺留分はそれぞれ、2分の1(遺留分割合)の2分の1(法定相続分)で4分の1となります。


☑遺留分額の算定の仕方

遺留分額算定の基礎となる財産額は、被相続人が「相続開始の時において有した財産の価額」にその「贈与した財産の価額」を加えた額から「債務の全額」を控除して算定します。

この「贈与した財産の価額」とは次のとおりです。

①相続が開始する前の1年間にした贈与は、すべて無条件で「贈与した財産の価額」となります。

②相続が開始する1年前の日より前にした贈与であっても「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与」については、「贈与した財産の価額」となります。

③相続人が被相続人から婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本として受けた贈与(特別受益分)は、贈与の時期にかかわりなく、相続開始の1年前のものであっても、すべて「贈与した財産の価額」となります。

たとえば、以下で算出した金額に個々の遺留分の割合を乗じた金額で遺留分額を算定します。

相続開始時に有した財産・・・預貯金1000万円、不動産3000万円、債務は100万円。 相続人である長女に婚姻のため800万円を贈与していた場合。 相続人は、配偶者、長男、長女。

遺留分算定の基礎となる財産=(1000万円+3000万円)+800万円-100万円=4700万円

・配偶者の遺留分額は、4700万円の4分の1で1175万円 ・長男の遺留分額は、4700万円の8分の1で5,875,000円


☑遺留分減殺請求とは?

遺留分の侵害がある場合、遺留分権利者は遺贈や贈与を受けた者に対し、自分の遺留分を確保するのに必要な限度で遺贈又は贈与を失効させ、その者らが取得した権利を遺留分権利者に帰属させることができます。これを遺留分減殺請求権といいます。

遺留分減殺請求は、相手方による意思表示(内容証明郵便を送る等)により行うことが可能で、必ずしも裁判による必要はありません。 ただし、相手方が任意に返してくれない場合は、やはり裁判上の手続(調停や訴訟)により解決を図ることになります。

遺留分減殺請求権は、遺贈、贈与の順に行使しなければなりません。 たとえば、遺贈を受けたAと贈与を受けたBがいる場合、まずはAに対して減殺請求をしなければならないことになります。

また、贈与の減殺請求は、後の贈与から順次前の贈与に対してする必要があります。 たとえば、1年前の贈与と3年前の贈与(減殺できることを前提とします。)がある場合、まずは1年前の贈与に対して減殺請求をしなければなりません。

遺贈だけの場合は、遺言に別段の意思表示がなされていない限り、その目的の価額の割合に応じて減殺請求します。 たとえば、Aに1000万円、Bに500万円をそれぞれ遺贈している場合、AとBに対し、2対1の割合で減殺請求しなければなりません。

遺留分減殺請求権には、期限があるので要注意です。

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知ったときから1年間行使しないときは時効によって消滅します。 また、相続の開始から10年を経過したときも、時効によって消滅します。

なお、1年の消滅時効の起算点(減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知ったとき)は、たんに贈与か遺贈があったことを知っただけでは足りず、減殺できるものであること(つまり、自分の遺留分を侵害するものであること)を知ったときになります。

遺留分制度の改正に関する記事「遺留分侵害額請求権とは?