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相続

面識のない相続人がいる場合の遺産分割協議

2018.01.27更新

「相続人の中に面識のない人がいるのですが、今後、相続手続をどのように進めたらいいのでしょうか?」とのご相談をお受けすることがあります。

たとえば、「面識のない相続人がいる場合」とは以下のような場合でしょうか。

●親戚から突然、「実話、〇〇さん(亡父)には、あなたたちの他に前妻との間にできた子どもがいるらしいわよ」との話しを聞いた場合。 ●父の戸籍を辿っていたら、面識のない兄弟がいることが判明した場合。

遺産分割協議をして相続手続を進めるためには、相続人の全員が協議に関与する必要があります。 困ったことに、面識がないからといって、その相続人を除外して手続を進めることができません。

ここでは、面識のない相続人がいる場合の相続手続の進め方についてお話しします。

所在調査からはじめましょう

既に面識のない相続人の住所や電話番号がわかる場合には、特に所在調査は必要ありません。

もし、連絡先がわからない場合には、最初に所在を明らかにする必要があります。 被相続人(亡くなった方)の戸籍から順に辿っていき、面識のない相続人の現在戸籍を調査します。 そして、戸籍の附票を取得することにより現住所を確認します。

最初のアプローチ

面識のない相続人の所在が判明したら、次はアプローチをどうするか検討します。 住所がわかれば、家に行ってみるのも一つの方法ではありますが、必ずしも近くに住んでいるとは限りませんし、いきなり押し掛けると過剰に警戒されるかもしれません。

そこで、最初のアプローチとしては、以下の内容が記載された書面(手紙)を送るのが良いかと思います。

・自分は被相続人〇〇の相続人であること。 ・あなたも被相続人〇〇の相続人の1人であること。

・被相続人には別紙の資料のとおりの財産があること。 ・相続手続を進めるために協力してほしいこと。 ・連絡先を教えてほしいこと。

できれば、質問状のようなものも同封して、返信用封筒も付けたほうが先方が返送しやすいかと思います。

とりあえず、手紙の送付後、一定期間は相手の反応を待ちます。

任意の協力が望める場合

面識のない相続人から手紙の返事があり、任意に協力してもらえる場合は特段問題ありません。 その後は通常の相続手続を進めるだけです。

面識のない相続人を含めた相続人全員で遺産分割協議を行い、各種名義変更等の手続を行います。 注意すべきは、なるべく面識のない相続人には負担をかけないように配慮する必要があることです。

ただし、この「任意の協力」はあくまでも遺産分割協議の場に参加することの「任意の協力」であり(なお、財産は何もいらないとのことで、こちらが示した分割内容に無条件で同意してくれる場合もあるかと思いますが)、その協議自体がまとまらなければ調停や審判手続に移行する可能性もあります。

任意の協力が望めない場合

面識のない相続人から一向に返事がない場合や協力しない旨の明確な意思表示があった場合は相続手続を進めることができません。 なるべくは任意の協力で進めたいので、念のため、もう一度手紙を送るなどして任意の協力を促したいところではあります。

どうしても任意の協力が得られない場合は以下の対応になるかと思います。

・自分で遺産分割調停を裁判所に申立てる。 ・弁護士に依頼して間に入って交渉してもらう(交渉が進まない場合は調停申立て)。

遺産分割調停で話がまとまらない又は相手方が調停に出てこない場合は、調停は不成立に終わります。 その後は、遺産分割審判の手続で、裁判所が遺産分割の審判(分割の具体的な内容を決める)をすることになります。

なお、この段階になると、司法書士と行政書士は代理交渉、調停の代理ができませんので、弁護士にご相談されたほうが賢明です。

最後に

面識のない相続人が判明した場合は、相続手続がスムーズに進まなくなるため、ほとんどの方は手続を放置したくなるのではないでしょうか。

しかし、手続を放置することにより、現在の相続人がお亡くなりになり、二次相続・三次相続と続いていくとすれば、将来的に相続手続が複雑化してしまいます。

手続を投げ出す前に、まずは一度、専門家にご相談いただければ幸いです。