仙台市泉区の司法書士・行政書士。相続と遺言サポートに特化した事務所です。

司法書士・行政書士 坂田英輝事務所

新着情報

改正相続法いよいよ本格施行その①

2019.08.11更新

相続法の改正が2019年7月1日から本格施行されています。施行日以後に生じる相続については注意を要しますので、数回にわたって主な改正点をいくつかご紹介します。なお、自筆証書遺言の方式緩和については先だって2019年1月13日より既に施行されています(自筆証書遺言に関する法改正の記事を参照)。

今回は「遺産分割における持ち戻し免除の推定」についてお話しします。

この制度は、婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対し、その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合においては、特別受益の持ち戻し免除の意思表示があったものと推定し、遺産分割においては、原則として当該居住用不動産について特別受益の持ち戻し計算を不要とするものです。

1.特別受益とは

そもそも、特別受益とは、相続人が被相続人から生計の資本として生前にもらっていた財産(現金、不動産等)のことをいいます。たとえば、被相続人が父で、相続人は長男と二男とします。二男は父の生前にマイホームの購入資金として1500万円の贈与を受けており、相続開始時に残っていた父の遺産額は4000万円とします。マイホーム購入費用の贈与分を考慮しないと、2人の取り分(法定相続分2分の1ずつ)は、長男2000万円、二男2000万円となり、結果として生前贈与を受けている二男が1500万円分得をすることになります。この贈与を受けた1500万円が「特別受益」です。

このままだと、長男と二男との間で不公平が生じてしまいます。

2.持ち戻し免除とは

そこで、この不公平を解消するため、民法は原則として遺産分割時に生前贈与分(特別受益)を含めて遺産額を計算し、贈与を受けた者からその分を差し引いて相続人の取り分を計算すると定めています。これを「持ち戻し」といいます。要するに、計算上、特別受益分を遺産に返還することです。そして、この持ち戻し(返還)を不要にする被相続人の意思表示のことを「持ち戻し免除の意思表示」といいます。

3.本改正で何が変わるのか

本改正により、たとえば婚姻期間20年以上の夫婦がいて、夫が生前に妻に対して2000万円の自宅(居住用不動産)を贈与していた場合を考えてみます。

夫の相続人は妻と長男の2人で、相続開始時の遺産総額は預貯金3000万円とします。

持ち戻しをした場合は、以下のとおりです。

・妻の取り分 =(3000万円+2000万円)×2分の1-2000万円=500万円

・長男の取り分=(3000万円+2000万円)×2分の1=2500万円

このように持ち戻し計算をすると、相続時に妻は預貯金500万円だけしか受け取ることができず、今後の十分な生活資金が確保できません。

今回の改正で「持ち戻し免除の推定(持ち戻しを不要とする夫の意思表示があったものと推定する)」がはたらくことにより、以下のとおり妻は1000万円多く預貯金を受け取ることが可能になります。

・妻の取り分 =(3000万円)×2分の1=1500万円

・長男の取り分=(3000万円)×2分の1=1500万円

4.最後に

本改正は、来年4月1日に施行される「配偶者居住権」と同様、残された配偶者が生活の安定を得られるように配慮したものと思われます。また、一方で、居住用不動産の遺贈又は贈与をした他方配偶者の意思(長年にわたる貢献に報いる等の意思)も尊重することができるものと考えます。今後、高齢化社会が進展する中、他方配偶者の生活保障は必要であり、かつ有益であることに間違いはないでしょう。