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司法書士・行政書士 坂田英輝事務所

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予備的遺言

2018.07.12更新

「私は、遺言書を作成して自宅不動産を妻に相続させたいのですが、万が一、妻が私より先に亡くなった場合は、長男に相続させたいと考えています。このような遺言書を作ることは可能でしょうか?」との相談をお受けすることがあります。

ここでは、予備的遺言についてお話しします。

1.予備的遺言の備え

予備的遺言とは、遺言書により財産を取得する予定であった者が遺言者よりも先に又は同時に亡くなった場合に備えて、次の財産取得者を予め指定しておく遺言のことをいいます。

たとえば、典型的な文例は次のとおりです。

「遺言者は下記の不動産を遺言者の妻に相続させる。妻が遺言者より前に又は同時に死亡していたときは、下記不動産は遺言者の長女に相続させる。」

仮に、この後段の予備的な定めがなく、財産を取得する予定であった者が遺言者よりも前に又は同時に亡くなった場合、当該不動産は誰が承継するのでしょうか。

遺贈の場合(相続人以外の者に承継させる場合)は法律に明確に定めがあり(民法994条1項)、その遺言書は効力を有せず、不動産の承継は原則通り共同相続人の遺産分割協議に委ねられることになります。

なお、相続させる遺言の場合(相続人に承継させる場合)は、法律に明文の定めはありませんが、判例(最判平成23年2月22日)は原則としてその遺言の効力を否定しています。つまり、こちらも共同相続人の遺産分割協議に委ねられることになります。

では、「遺言書により財産を取得する予定であった者が遺言者より以前に亡くなった場合、再度、遺言書を作り直せばいいのでは?」とも考えられますが、そのとき既に遺言者の判断能力が低下していれば(その程度にもよりますが)、遺言書の作り直しは不可能です。また、公正証書によって作り直す場合には、新たな費用負担も生じてしまいます。

せっかく遺言書を作成しても、遺言者と財産を取得する予定であった者の死亡のタイミングが前後することにより、結局は共同相続人の遺産分割協議が必要になってしまいます。相続争いを回避するために遺言書を作ったはずが、結局、遺言が無効となり、争いが生じることにもなりかねません。

したがって、ご自身の想いの実現のためにも、遺言書に予備的な定めを設けておくことは、非常に重要になってきます。

2.最後に

当事務所でよくご相談をお受けする事例で、ご夫婦が同じタイミングで遺言書を作成されるケースがあります。相談者であるご夫婦は、どちらが先に亡くなったとしても遺言の効力を維持できるようにしたいとのご希望があったため、この予備的遺言を提案させていただきました。

「遺言者は遺言者の妻(又は夫)に遺言者所有の不動産及び預貯金を相続させる。妻(又は夫)が遺言者より前に又は同時に死亡していた場合は、遺言者所有の不動産及び預貯金は遺言者の孫Aに遺贈する。」との遺言書をお互いに作成しておけば安心です。

なお、この例にもあるように、予備的な定めは相続人に限られず、相続人以外の第三者を財産取得者とすることも可能です。

予備的遺言により財産を取得する予定であった者が先に死亡した場合にも備えたい等、条件分岐が複数になる場合は、文言も複雑になりますので、一度、専門家に相談することをお勧めします。