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相続

遺留分侵害額請求権とは?

2020.01.12更新

2019年7月1日の改正相続法の施行により、遺留分(一定範囲の相続人に最低限保障される取り分)を侵害された相続人に与えられる権利であった遺留分減殺請求権が遺留分侵害額請求権に変わりました。(遺留分及び遺留分減殺請求権の詳細については以前の記事「相続分と遺留分」を参照してください)

改正前の遺留分減殺請求権は「物を直接取り戻す権利」でした。たとえば、遺留分(仮に4分の1)が侵害されている場合には、不動産を取得した相続人等から共有持分(4分の1)を返してもらえました。

改正後の遺留分侵害額請求権は「遺留分を侵害された額に相当する金銭を請求できる権利」です。つまり、不動産等の物を取り戻すのではなく、あくまでもお金を支払ってもらうことになります。たとえば、遺留分侵害額が1000万円だった場合、1000万円相当額の不動産や株式等の物での返還は認められず、あくまでも1000万円を金銭で支払う必要があります。どうしても不動産等の物で返してもらいたい場合には、金銭の支払いに代えて不動産の権利を取得させる旨の代物弁済(代わりの物で払うこと)の合意をする必要があります。改正法では、遺留分侵害額請求を受けた相続人等がすぐに遺留分侵害額相当の金銭を支払うことができない場合には、その者の求めにより裁判所が支払期限の猶予を与えることができるようになりました。

改正法のもとでは、遺留分を侵害する遺贈や贈与を失効させることはできません。そのため、遺言書等により不動産や株式を承継させたい人にだけその物を承継させることができ、遺留分を侵害された相続人からの請求に対しては、物の返還ではなく金銭を支払うことで解決できることになります。

たとえば、不動産を長男に承継させたい場合、遺言書を作成しておけば不動産をスムーズに長男へ承継させることができます。他の相続人から遺留分侵害額請求があった場合には、その侵害額相当の金銭の支払いができれば、不動産の共有持分を返す必要はありません。これにより、不動産や株式の共有化を防ぐことができ、円滑な事業承継も可能となります。

なお、遺留分侵害額請求には期限があるので注意を要します。遺留分侵害額請求は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年間行使しないと時効によって消滅してしまいます。相続が開始した時から10年経過したときも同様です。

そのため、自分は損しているかもしれないと気づいたときには、すぐに弁護士・司法書士等の法律家に相談したほうがいいでしょう。