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司法書士・行政書士 坂田英輝事務所

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清算型遺贈

2019.05.22更新

1.清算型遺贈とは

遺贈とは、遺言により財産の全部又は一部を相続人又は相続人以外の第三者に無償で譲渡することをいいます。通常、遺贈は不動産や預貯金(解約・払戻金)等をそのまま譲渡するのが原則です。例外として、たとえば、相続人である子どもたちが各自マイホームを所有しており、将来的に空き家になることが明らかな場合等、自宅不動産をそのまま承継しても意味がない場合があります。

その場合、遺言者は、全て又は一部の財産(この例では不動産)を換価処分して得られた金銭を遺贈する旨の遺言書を作成することが可能です。なお、換価処分後の金銭から相続債務、換価処分に要した費用および遺言執行のためにかかった経費を精算するのが通常です。要するに、財産を売ったお金から債務や経費を支払い、残ったお金を分配するという手法です。

これを「清算型遺贈」といいます。

2.遺言書の条項例

清算型遺贈に関する遺言書の条項例は以下のとおりです。

<例1 全ての財産を換価処分して分配する場合>
第〇条 遺言者は、遺言者の有する全ての財産を換価処分し、その代金から遺言者の債務、財産の換価処分に必要な費用、その他本遺言の執行のために必要な費用を控除した残金を、A、B、Cに各3分の1の割合で遺贈する。
<例2 特定の財産を除いた全ての財産を換価処分して分配する場合>

第〇条 遺言者は、次の財産をAに遺贈する。

    不動産の表示

    所在 〇〇市〇〇〇丁目

    地番 〇〇番〇

    地目 宅地

    地積 〇〇.〇〇㎡

 2 遺言者は前項の財産を除いた遺言者の有する全ての財産を換価処分し、その代金から遺言者の債務、財産の換価処分に必要な費用、その他本遺言の執行のために必要な費用を控除した残金を、B、Cに各2分の1の割合で遺贈する。

<例3 特定の財産だけを換価処分・分配して残りの財産を特定の人に遺贈する場合>

第〇条 遺言者は次の財産を換価処分し、その代金から遺言者の債務、財産の換価処分に必要な費用、その他本遺言の執行のために必要な費用を控除した残金を、B、Cに各2分の1の割合で遺贈する。

 2 遺言者は、前項の財産を除いた全ての財産をAに遺贈する。

残金の配分については、相続人全員に分配すること、相続人以外の人に分配すること、相続人と相続人以外の人に分配すること(「・・・残金の2分の1を遺言者の子であるAに相続させ、2分の1を内縁の妻であるXに遺贈する。」)等、どのパターンも可能です。

3.遺言執行者の指定を忘れずに‼

遺言執行者がいない場合、遺言の執行(財産の換価処分等)は遺言者の相続人全員で行う必要があります。しかしながら、財産の分配を受けることができない相続人がいる場合、手続に協力しない相続人が出てくる可能性もあります。そのため、清算型遺贈を行う場合には、必ず遺言執行者を指定するのが通常です。遺言執行者は、相続人の代理人としての地位に基づき、財産の換価処分を単独で行うことが可能です。したがって、遺言執行者を指定しておけば、一部の相続人の協力・非協力を気にする必要がなくなります。

なお、相続人以外の人だけが財産の遺贈を受ける場合(子、配偶者、直系尊属が何ももらえない場合)、相続人から遺留分減殺請求を受ける可能性がありますので注意を要します。

遺言執行者については、未成年者および破産者以外なら誰でもなることが可能ですが、財産の換金や遺留分減殺請求の対応等がありますので、弁護士や司法書士等の専門家に依頼されることをお勧めします。

4.最後に

清算型遺贈をする際には注意すべき点があります。遺言執行時に不動産を売却する場合、一度、相続人の名義に相続登記をしたうえで買主に移転登記を行います。この一連の手続自体は遺言執行者が行いますが、名義上は相続人名義で売却することになるので、相続人には「譲渡取得税」が課税される可能性があります。そのため、事前に譲渡所得税の計算を行い、換価金から差し引いておく必要があります。

清算型遺贈は財産の売却が絡み非常に複雑ですし、揉め事に発展する危険も含んでいます。将来的に遺言の執行を行う場面をも想定したうえで、さまざまな対策を検討する必要があります。遺言書を作成する際には十分ご注意ください。