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遺言

自筆証書遺言に関する法改正

2018.09.19更新

1.自筆証書遺言の方式緩和について

平成30年7月6日に民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立しました(同年7月13日公布)。遺言書の方式緩和については平成31年1月13日から施行されることになっています。 現行法上、自筆証書遺言の作成には「全文、日付、氏名」の自書が要求されていますが、今回の方式緩和により自筆証書遺言に添付する財産目録(不動産や預貯金等の財産の表示が記載されているもの)については自書でなくてもよいものとなりました。これにより、財産目録をパソコンで作成したり、登記事項証明書や通帳のコピーを添付することにより遺言の作成ができるようになりました。 本改正により「全文の自書」の負担が軽減されることで、自筆証書遺言の利用を促進することが期待されます。しかも、登記事項証明書や通帳のコピーを添付すれば、その財産の表示の記載を間違えることがなくなりますので、遺言者の最終意思がより実現されやすくなるのではないでしょうか。なお、この場合でも財産目録等の各ページには全て遺言者の署名押印が必要ですのでご注意ください。

2.法務局における遺言書の保管等に関する法律について

平成30年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立しました(同年7月13日公布)。当該法律の施行期日は、今後政令で定められることになりますが、公布の日から2年以内に施行されます。 当該法律の施行後は、法務局へ遺言書の保管の申請が可能です。概要は以下のとおりです。
  1. 保管の申請は、自筆証書遺言に限定されます。また、遺言書は封のされていない法務省令で定める様式に従って作成されたものでなければなりません。なお、様式は別途定められる予定です。
  2. 保管の申請の管轄は、遺言者の住所地もしくは本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局です。
  3. 保管の申請は、遺言者本人が出頭して行う必要があります(本人確認があるため)。
  4. 保管の申請がされた遺言書については、法務局内で原本を保管するとともに、その画像情報等の遺言書にかかる情報を管理することになります。
  5. 遺言者は保管されている遺言書の閲覧請求ができますし、遺言書の保管の申請を撤回することもできます。なお、遺言者の生存中は、遺言者以外の方は遺言書の閲覧を行うことができません。
  6. 遺言者の相続人、受遺者等は、遺言者の死亡後、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求ができます。
  7. 法務局は、遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは、速やかに当該遺言書を保管している旨を遺言者の他の相続人、受遺者及び遺言執行者に通知します。
なお、法務局に保管されている遺言書については、遺言書の検認の規定が適用されません。つまり、公正証書遺言と同様に家庭裁判所での検認が不要になります。 当該法律の施行により、自筆証書遺言のデメリットのひとつである「紛失のリスク」を回避でき、しかも検認が不要になるので、相続開始後の手続を円滑に進めることが可能です。 勘違いしないでいただきたいのは、当該法律は遺言書の「保管の申請ができる」であって、自筆証書遺言ならば全て「保管の申請しなければならない」というわけではありません。いままで通り、ご自身で保管することも可能ですので、利用するかしないかはあなた次第ということになります。

3.最後に

本改正により公正証書遺言を利用せずとも、「全文自書の負担の軽減」、「紛失リスクの回避」及び「検認手続の省略」が可能となりました。今後、自筆証書遺言の利用が促進されることを期待したいところです。 なお、法務局が保管申請の受付の際に遺言書を確認することになりますが、それはあくまでも形式的審査(氏名、日付の記載はあるか等の法の求める方式が備わっているかの確認)に限られますので、遺言書の内容(有効か無効か等)を確認するものではありません。そのため、遺言の内容(ご自身の想いがちゃんと実現されるかどうか等の検討)については事前に専門家へご相談いただくことをお勧めします。